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ポルトガルの名城  ペーナ宮殿とフェルナンド2世

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ポルトガルの名城 ~フェルナンド2世とペーナ宮殿~ 


ポルトガル・ペーナ宮殿
山上に立つ城 観光バスでは入れない不便さが魅力


ポルトガルのノイシュバンシュタイン城と喩えられる、ペーナ宮殿。

初めてこの城を目にした人は誰もが なんて美しい、おとぎ話に出てきそうな、ロマンティックな城だろうと目を奪われることでしょう。
時代からして、近世に建てられた”アンティーク趣味”なお城、という感じもします。
かのルートヴィッヒとも血縁関係にあるだけあって(笑)どこかしら求める美観が重なるのでしょうか。ノイシュバンシュタインからも見える、ホーエンシュバンガウ城にも、ちょっと似ています。

外壁は、カナルに照り映えるとりどりのヴェネチアンカラーのよう。様式は、ムデハル、ゴシック、ルネサンスの様式が見事に溶け合った、イベリア独自の「マヌエル様式」。なんともユニークな景観ですね。

長い歳月をかけて、丹念に注文をつけて、フェルナンド2世は誰のためにこの城を完成させたのだろう・・・と考えるとき、後世の人達のため、貴重な観光財源として遺していったと思わざるを得ません。
フュッセンのあの白鳥城もまさにそうでした。あるじのない城―-あまりに美しいがゆえに、
汚れた人間を拒むかに見える 人格をもった建造物のようです。  



ペーナ宮殿
まるでおとぎの国かテーマパークのよう


ドイツ出身でありながら、ポルトガルをこよなく愛したフェルナンド王。
「女王の婿」という地位ゆえに、政治的な実権を握ることはできず、その出口なきエネルギーが、夢の城の建設へと注がれていったのでしょうか・・
元々芸術肌の人物だったようですから、19世紀半ばから後半にかけての、権謀術数にまみれた国際外交の渦に巻き込まれるよりも、自分の趣味の世界に没頭して、お気に入りのオペラ歌手を愛人にして楽しく過ごすことが出来たことは、別な面から見れば、むしろ幸せな人生だったかもしれません。

ちなみに、上に書いた”マヌエル様式”とは、16世紀初頭のマヌエル1世王の時代の建築で、大航海時代を反映したモチーフや植民地からもたらされた珍品などをデザインとしてあしらったものを言います。具体的には、船の網やロープ模様、花や葉飾り、スパイスの実、原住民の姿、珍獣・・などが浮彫彫刻の意匠となっています。代表的な建造物としては、リスボンのジェロニモス修道院、トマールのキリスト修道院などがあり、ポルトガルにおけるルネサンス様式が、さらに独自に発展した装飾表現と考えると、理解しやすいかと思います。
なお、言葉は似ていますが、アンバランスなプロポーションの誇張とデフォルメを特徴とする、ルネサンス後期の「マニエリズム」とは異なります。



ペーナ宮殿入口
ペーナ宮殿の特徴あるエントランス

さて、城とあるじの歴史についてざっとダイジェストしてみましょう。

シントラの山の高台にそびえ立つ、19世紀に建造されたおとぎの国のお城。
大型観光バスが登れない山上にあるので、一般のツアーでは行けないが、お奨めの名所。
1840年着工、45年間を要して建設、1885年(明治18年)王の死と共に完成。
ゴシック、イスラム、ルネサンス、マヌエル様式が融合したロマン主義宮殿。

フェルナンド2世(1816ー85年)は、オーストリア・ハンガリー帝国の名門、ザクセン・コーブルク・ゴータ王家出身。英ヴィクトリア女王の従兄、ベルギー国王の甥にあたる。
ノイシュバンシュタイン城を建てたバイエルン王ルートウィヒ2世(1845-86年)と縁戚関係。

19歳の時、最初の夫に先立たれたばかりのマリア2世と結婚
子供は11人、うち7人が成人(殆ど毎年出産!)仲睦く暮らしていたが、
1853年、女王は32才の若さで産褥で早世。
妻亡き後は、息子の摂政となる。フェルナンドはあくまでも婿(王配)で、女王との間に嫡子が生まれた場合に限り、王として共同統治が認められる身分であった。ハプスブルグ家の女帝マリア・テレジアの場合と似ている(はい、種馬扱いです >_<)
1853年、長男ペドロ5世、13歳で即位、24歳でコレラで死去。
1861年、次男ルイス1世即位(文人肌で政治的に失策。結婚はしたが、ゲイの噂あり)
フェルナンドは愛人のオペラ歌手エリザと1869年に結婚、ペーナ宮殿で暮らしていた。
1885年、69才で死去。遺言では愛妾の所有としたが、平民の妻と娘に莫大な王家の財産が相続されることを懸念した議会は猛反対、王子が継承。
その後は息子カルロス1世、アメリア妃、孫マヌエル2世が居住。
1908年、国王と皇太子の暗殺事件でポルトガル王制は崩壊。その後は共和国が所有。
完成後わずか25年、一世代で王家の手から離れてしまった。




ブラジル生まれのマリア2世女王と王配フェルナンド2世
マリア二世とフェルナンド



ポルトガル・ブラガンサ朝末期の王たちは、いずれも短い生涯。
 マリア2世 34歳
 ペドロ5世 24歳
 ルイス1世 50歳
 カルロス1世 44歳 
 ルイス・フィリペ 20歳 ※在位20分間 父王の暗殺直後に死亡、ギネス記録
 マヌエル2世 43歳 イギリス亡命後に病死

1869年、スペインのイサベル2世の退位後の王位継承問題が生じた時、スペイン王への即位を要請されるが、ポルトガルの独立を維持するために、これを断る(エライっ!)

フェルナンドは「芸術王」と称され
「ドイツ人として生まれたが、ポルトガル人として生きた王」として親しまれている。
引退後14年間は、学問・芸術・科学の振興に生涯を捧げ、過去の歴史遺産を再評価して擁護&保存に努めた。
現在、ポルトガルのユネスコ世界遺産に登録されている殆どの建造物を再建修復した功績は大きく、最近になって、ポルトガルの識者の間で高く評価されている。




ちょっとだけ内部公開 王の執務室
ちょっとだけ内部公開 王の執務室

ロマネスク、ルネサンス様式ともゴシック様式とも違う・・・やっぱりどこか独特ですね
ルネサンスともゴシックとも違う・・・やっぱりどこか独特ですね



さまざまな人間ドラマが秘められている割には、一般に知名度が低いのがポルトガルという国、そして数々なモニュメントです。
この城もその内の一つといえましょう。

異文化の融合という火花が散って花開いた建築芸術。
こうして手塩にかけて育てた城も、孫の代には、王家の手を離れて、住むべきあるじを失ってしまった儚い運命ゆえに、なお一層のロマンの影を宿した土地となっているかのようです。
嵐の夜、雷雨と稲妻の下、フェルナンド王の幻影が城のテラスを歩いていたとしても、さほど不思議はないような・・

フェルナンドの魂もまた、手塩にかけたこの城の中を哀惜をもって徘徊しているのかもしれません。



美雨


おとぎの城のようなペーナ宮殿
ペーナ宮殿
今日もありがとう




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Author:MIUMIU 美雨
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