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ケルトの吟遊詩人が蒔いた種 奥深きファドの世界史

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ケルトの吟遊詩人が蒔いた種 奥深きファドの世界史

ファドがまた静かなブームを呼んでいるのか、”ファド”に関する検索ヒット数が先月だけで1000を超しましたので、前回に続きそのルーツや人気の秘密を探ってみます


「リュートとレベックを弾く吟遊詩人」スペイン
リュートとレベックを弾く吟遊詩人


ポルトガルのファドが大好きな美雨です。
ファドに限らず、スペインのマドリガルやフランスのシャンソン・・・各国の恋唄やバラード、どれも奥が深くそれぞれに魅力を持っていますが、今回は吟遊詩人をテーマに、ポルトガルの至宝と言われるファド(ポルトガルのバラード)を語ってみたい。

ファドといえば、アマリア・ロドリゲスぐらいしか知らないながらも、一時期はかなりCDを買いこみました、アマリア・ロドリゲスは父の代から好きな歌手の一人です。
リスボン旧市街の晩年を過ごした家は一般公開されており、行ったことがあります。

ファドには、リスボン派とコインブラ派があり、中世の都市コインブラ大学に伝わるファドは、トルバドゥールの流れだそうです。また、トマール修道院は、フランスで弾圧されたテンプル騎士団がキリスト騎士団として復興した拠点で 後にエンリケ航海王子が騎士団長となって庇護した経緯があります。



ポルトガルで最も愛され親しまれているファド(バラード)『黒いはしけ』



しかしながら、ファドのルーツがケルトの流れを汲む、中世の吟遊詩人の歌であったとはびっくりでした。ケルトのドルイド僧といえば、オペラ「ノルマ」を見ていろいろ不思議なスピリチュアリズムを覚えましたが、案外吟遊詩人は宗教的、神秘主義的な暗号を歌に秘めて隠密活動をしていたのかもしれません。

ファドって、決して恋や人生を歌っただけでなく お墓とか、船とか、そうしたものまで詩にしてしまう とてもアニミズム的な要素があるのです。 もちろん歌だけ聴いても素敵ですが。
そこで、冒頭にファドで一番愛されていると思うロドリゲスの Barco negro:「黒い艀」のyoutubeを載せてみました。
Barco negro は、長らく日本では「暗いはしけ」と呼ばれていましたが、正確には「黒い艀」なのだそうです。古い映画の主題歌であったこの曲は、全く暗い曲調ではなく、リズミカルでむしろ歓びに満ちています。なぜなら、漁に出た恋人や夫が黒い小舟に乗って、たくさんの魚を獲って無事に浜辺に戻ってくる風景なのですから・・

ファド独特のポルトガルギターの音色も艶やかでうっとりしますね。
アニミズムという指摘はちょっとアレですが、ポルトガル人は、古代ケルト人の血もかなり濃く受け継いでいるようですので、おそらく底流に流れている祖先の声がなせるものと、私は想像しているのです。



ラストゥールの廃墟
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フォアの塔夜景
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一般に、「トルバドゥール」という名で知られている、南フランスを起源とする中世領主の宮廷付き詩人。このあたりも個人的に、妙に心惹かれるテーマのひとつであります。
学生の頃、アルビの少し北にある「コルド・シュー・ル・シェル」という名前の かなり辺鄙な地方にある山上都市を訪れた時に、朝霧の中から突如としてあらわれた雲の上の城砦に感動した記憶があります。

写真はラングドック地方の古城「ラストゥールの廃墟」と「フォアの塔夜景」。フランスに住む友人がレンタカーを借りてくれて、ピレネーのフランス側とスペイン側を併せてドライブした時のフォトストックを載せてみました。

今となっては、徹底的に破壊された廃墟のままで、当時の繁栄を偲ぶよすがもないですが、ラングドック地方は中世フランスのロマンを秘めた、知られざるエピソードの宝庫らしい。
12世紀に全盛期を迎えたが、13世紀になると、南仏の清教徒ともいうべき異端カタリ派を殲滅すべく、アルビジョワ十字軍が派遣されて全滅の憂き目にあった。また14世紀初め、あまりにも富と権力を蓄えたテンプル騎士団が弾圧されて、その時の亡命騎士たちがスペインやポルトガルに伝えた流れもあります。それはトゥーナやファドに形を変えましたが、やはりルーツは中世の吟遊詩人の歌であるのです。


マルチン・ルターが新約聖書の翻訳を成し遂げ、中世吟遊詩人たちの活躍の場にもなっていたヴァルトブルク城
マルチン・ルターが新約聖書の翻訳を成し遂げ、中世吟遊詩人たちの活躍の場にもなっていたヴァルトブルク城



最近、この分野を研究されている方の記述を拝見し、胸が高鳴る境地でした。
広義な意味で解釈すれば、中世ヨーロッパのみならず、古代ローマ、北欧、ケルトのドルイド僧、またインド、中国などにもこうした役割を果たした人々が存在していたというのです。
歴史的な出来事や、人間の喜怒哀楽の情感を歌に託しながら、とりわけ愛を讃えて、人々に伝え、芸術的な表現形式を発展させてきた詩人たちです。
今に残されているものは、長い時代の風化に耐えてきた、ほんの片鱗にすぎません。多くはアウトサイダー的な立場にいた無名の人々が携わり、優れた作品を残していったのでしょう。



中世の城前で吟遊詩人が歌っている図
中世の城前で吟遊詩人が歌っている図


西欧の典型的な名作としては「アーサー王物語」「ロランの歌」「エル・シッド」「トリスタンとイゾルデ」などが挙げられるでしょう。ワーグナーが作曲した「ニュールンベルグのマイスタージンガー」もこの系列の物語が大規模なオペラにまで発展したものです。

東洋に目を向ければ、中国では、私たちが中学、高校の「漢文」で教わった、屈原、杜甫、李白なども、宮廷官僚の第一線を立ち退いてから市井にあって名詩を吟じた者たちです。日本では、記紀万葉から、平安朝の貴族階級によって嗜み詠まれた和歌、室町の連歌の世界。琵琶法師によって歌い語られた「平家物語」も戦乱の世が生み出した壮大な叙事詩として考えられるでしょう。

歴史の中の真実を語り、悲劇の人物の無念の思いを、後世の人々に伝えたい。永遠に失ったひとへの愛惜の思い。そして、生きて在るからには、誰かを愛し、愛されたい。より本物の愛に近づきたい。こうした感情が人をしてポエムを創り、メロディーを生み出す動機となさしめる。
考えてみたら、現代の歌謡曲も、その流れを遥かに辿れば、古代の歌垣や相聞歌を起源としていることは想像に難くない。
私が国を問わず世界各地の歌に、とりわけバラードに心を動かされるという理由は、こんなところにあります。


中世吟遊詩人の愛の歌
中世吟遊詩人の愛の歌



ただ、吟遊詩人というのは、イメージの通り、必ずしも放浪していたわけではないようです。実際には、王侯貴族階級が多かったようですので・・・これは中古の時代の日本も同じですね。

ちょっと視点を変えて、外から日本を見ると、文学の世界も広がってきます。
西行や芭蕉は、完璧に吟遊詩人ですし、「伊勢物語」もそういう性格を帯びていますね。きっと西欧人が読んでも感慨深いものがあると思います。
「平家物語」になると、これはオペラにしてもいいくらいドラマチック。勿論、壇ノ浦の滅亡でクライマックスを迎えてフィナーレ。平家の落人たちが山里の奥に散っていくのを暗示して幕になるというのもいいと思いませんか?


日本版中世の吟遊詩人 琵琶法師によって語り継がれ、人々の涙を誘った平家物語
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吟遊詩人を脳内変換させ、ちょっと日本ネタで語ってみましょう。
『平家物語』は、「読み本系」と「語り本系」に大別できますが、琵琶法師によって語られた「語り本系」が「平曲」などとも呼ばれ、我々にとっては親しみのある作品であると思われます。ただ「実際の語りの曲」は余り残っていないようで・・・琵琶の調べに言の葉を載せて公達達の最期や運命に翻弄される女達を語る・・・聞いてみたかったと思います。
個人的に好きな場面は(語りを読んだだけですが)「敦盛の最期」と「小督(こごう)」です。
ちなみに『平家物語』は後の「能」や「幸若舞」(こうわかまい)にも享受されています。信長の「人間五十年、化天の内を比ぶれば、夢幻の如くなり・・・」は「幸若舞」の『敦盛』の一節。
今回「吟遊詩人」という名称から、自分自身が「旅に生涯をかけた人々」にちょっとスタンスを振りすぎているような気がしてきました。『万葉集』は無論のこと、わが国には『和漢朗詠集』という「漢詩の一節」や「和歌」を朗詠する文化が(貴族に限られるものの)まぎれもなく存在したことに、遅まきながら思い至りますね。

こんなふうに、世界史を日本史に置き替えて脱線する授業はなぜか学生たちにウケが良いという・・・時代がどんなに変わっても若人のイマジネーションの豊かさは変わるものではありません。

ケルトのドルイドについては、一切文字や文献を残さなかったというのがツライところ。それだけにイマジネーションが刺激される世界。象徴と暗号を携えて隠密の旅をする吟遊詩人... 古代ローマ帝国の侵略に対して闘いを挑むドルイドの秘密結社と戦士たち。ダビンチ・コードに優るとも劣らぬドラマのテーマになりそうですね。




美雨


中世画 吟遊詩人とその恋人
中世画 吟遊詩人とその恋人
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Comment

NoTitle 

こんばんは。

知らない世界を垣間見る事ができました。

全く知らないことばかりで・・・ポルトガルと言ったら
思いつくのはワイナリーが多いと聞いたことがある
くらいで・・・(;^_^A

「黒いはしけ」を聞きながら、異国の雰囲気を
あじわいました。
  • posted by アリス 
  • URL 
  • 2017.03/21 21:52分 
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makiraさま 

こんばんは(*^o^*)
makiraさんはブラジルのお友達を通してポルトガル語を学べるのですね^^
Saudadeは普通に素敵な挨拶言葉だと思っていますが、もっと深い意味があるのでしょうか。
でも、その微妙な意味合いの中に、わびさびに通じるものがあるのかもしれませんね。

ファドはいつ聴いてもいいですね。^^
お台所をしながらよく各国の古いバラードやポピュラーをかけているのですが、
ファドをかけるとき、どことなくメロウな気分になり、カタプラーナのように濃い味の鍋煮込みみたいなものが食べたくなるんです。辛いマディラ酒で煮込むとファドみたいな深みのある味わいが出ます。
ファドを聴くと、ポルトガル料理が食べたくなってきますね^^
  • posted by 美雨 
  • URL 
  • 2015.04/06 00:36分 
  • [Edit]

サミーさま 

こんばんは(*^o^*)

花冷えの頃とはよく言いますが、暑くなったり寒くなったり忙しく、体調を崩しやすいですね。
サミー先生には変わらず元気でご活躍のご様子、何よりです^^

> 古い映画の大人のラブストーリーをイメージしちゃいますね。
> なぜか、バーグマンとかソフィア・ローレンとかが頭に浮かぶんです。

はい、言われてみると、私もローレンとか、ジーナ・ロロブリジーダなどが脳裏に浮かんできます。
黒髪に黒い瞳、どこかジプシー娘のような、土着の香りがするような、情熱的なダンスが似合う女性たちです。

サミーさんおっしゃるように、ファドは生活そのものや生きる世界そのものを歌っているのでしょうね。本当に、どこか懐かしいさを感じるメロディです。こちらこそ、素敵なコメントを、ありがとうございます。
  • posted by 美雨 
  • URL 
  • 2015.04/06 00:35分 
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NoTitle 

こんにちは、美雨さん!

難し~!
 ファドはポルトガルの大衆音楽くらいの認識しかありません 泣) 
何か日本の「わび・さび」に通じるものもあるようですね!
「サウダーデ」という言葉で表されるようですが、
ブラジルの友達からのメールの最後に「Saudade」の言葉があり、
イマイチ理解に苦しむ、微妙な言葉なんです 汗)
  • posted by makira 
  • URL 
  • 2015.04/05 01:00分 
  • [Edit]

こんにちは 

美雨さんの真骨頂が随所に見られる記事ですね。
音楽を歴史に絡めて語るあたりは、美雨さんらしい。
ロドリゲスさんの歌は聞いたことがあります。
古い映画の大人のラブストーリーをイメージしちゃいますね。
なぜか、バーグマンとかソフィア・ローレンとかが頭に浮かぶんです。
ファドは生活そのものや生きる世界そのものを歌っているのかも。
懐かしいさを感じるメロディです。
面白い記事をありがとうございます。

  • posted by サミー 
  • URL 
  • 2015.04/04 13:38分 
  • [Edit]

かえるママさま 

こんばんは。
関東は いまや桜吹雪となり、はらはらと風に舞う花びらを手で掴んでは この春を楽しんでおります。
しかし、今年はお呼ばれや宴会が特に多く、お花見にも疲れてきたこの頃です。(笑)
そんなときは、ビタミン剤みたいに良い音楽を聴いて、ジュワーと心に栄養を沁み渡らせるのが一番の癒しになりますね。^^

音楽を愛するかえるママさまとは、同じ曲を聴いて共に遠い異国の風に想いを馳せることができる希少な友情で繋がれ、本当にしあわせに存じます。

世界にはまだまだ、未知なる素晴らしいバラードや謡いがうずもれている気がします。
かえるママさまと共に世界じゅうの素敵なリズムとメロディーをたずねて紹介しあいたいですね^^
  • posted by MIUMIU 美雨 
  • URL 
  • 2015.04/02 00:52分 
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NoTitle 

今日も別世界へ連れて行って下さってありがとうございます。
「黒いはしけ」を聴きながらしっとりと、異国へ小旅行をしました。
私たちは、気がつかないうちに、世界の出来事の影響を受けたり、与えたり、影響し合っているのでしょうか。
ポルトガルのファドは、どことなく落ち着いて懐かしい響きですね。
楽しくてためになる美しい記事をありがとうございます!
  • posted by かえるママ21 
  • URL 
  • 2015.04/01 21:51分 
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MIUMIU 美雨

Author:MIUMIU 美雨
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更新はマイペースで続けていきますのでどうぞよろしくお願い致します。

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