美雨の部屋へようこそ

世界の旅日記や 文化、歴史のぷち・エッセイを書いています。他にも海外、国内のお気に入りのドラマのあらすじ&感想を勝手気ままに綴っています。

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土門拳の芸術   ~山形、酒田市 土門拳記念館へ~

土門拳の芸術 『室生寺』 『筑豊のこどもたち』

土門拳をご存知でしょうか。
写真家で、『古寺巡礼』『筑豊のこどもたち』で有名な写真家ですが、日本の美術史に名を残す人です。
土門拳の撮った写真は、生命の美しさを永遠に写し留めています。

※イルグクさんの各記事&スーパーマン記事は前の記事(最新記事欄)を見て下さい。
吉祥天2



土門拳の生まれ育った酒田市にある記念館を訪れたのは、昨年、夏の終わりでした。

そしてまた、再びの酒田へ。
写真好きの相方に、どうしても土門拳の芸術を紹介したかったからです。

子どもの頃、父が揃えていた雑誌「太陽」だったと思います、写真家特集を見たのが始まりでした。
土門拳さんの作品にふれる機会があったのは幸いなことです。

ただ、イメージとしてよく覚えているのは古い寺と仏像たちの人間的な素顔(あとで「室生寺」と知りました)、そして昭和の原風景を映す、『筑豊の子供たち』でした。
嘘のないまっすぐな目線、ひとをみつめるやさしい眼差し・・・自分自身こどもながら、写真の中にある”何か”を感じられたのだと思います。

偶然が重なり、酒田の土門拳記念館へ行けた事は、自分の生涯の中で最も意味のある出来事かも知れません。



吉祥天


土門拳記念館


近代的でモダンな建物の記念館なのに、なんて自然の景観と調和していること・・・

霊峰、鳥海山を借景にうつす大きなお池があって、白鳥もいて、イサム・ノグチの彫刻もあって・・・・加えて土門さんのコンセプトを120%表現しつくしたような谷口吉生さんの建築がまた素晴らしい。
百聞は一見にしかず、やはりこの記念館だけは,写真でなく 足を運んで実感するものだと思います。

そして、館に足を踏み入れ目の当たりにする数々の写真は、ときを忘れさせ、圧倒的な迫力をもって見る人の胸を打ちつづけます。

記念館、ということで、土門拳の時代を反映した、昭和の風景のスナップばかりかと思っていたのですが、土門拳の仕事を広く網羅していて、彼の生涯の仕事を振り返ることができる創りになっていました。

物事の真ん中を射ぬくような鋭さと、
それでいて時代と真直ぐに向きあおうとする土門拳の優しさが大好きです。

魂を握り揺さぶる生きている写真の群れ ・・・
写真の美術館で、こんなに全身を揺さぶられるような感覚は初めてです。
彼の写真の中には、鬼がいる・・・そんな感覚。



土門健記念館


脳梗塞で右手が使えず左手で墨で書いた「古寺巡礼」の文字・・・土門さん直筆の力強い筆使い
古寺巡礼



土門さんの作品集では、何といっても『古寺巡礼』が好きです。

陰影から仏像の動と静、陰と陽が伝わってきます。
室生寺の写真に出会い、仏像との向き合い方が変わりました。

特記すべきは、ヒーローの四天王や帝釈天ばかりを被写体にするのでなく、踏みつけにされた天邪鬼(アマノジャク)や陽の当たらない化仏たち(観音さまの頭についた仏)の後頭部ほんの小さな仏に スポットライトをあてる土門さんの遊びごころ・・・凡人は、気付こうともせず通り過ぎてしまうばかりなのに・・・・
にらめっこしたら、絶対負けてしまいそうなこのユニークな笑顔を、ここまで 写し出せる土門さんのセンスとメカニズムの妙。

土門さんの言葉「時に本質的なものをえぐり、時に瑣末的なものにかかずらあおうとも、無差別、平等な機械(メカニズム)の働きそのものにすぎず、そこがおもしろいのである」を思い起こさせる、”名写”です。



観音様より頭部の化仏に目がいってしまう
観音様より頭部の化物に目がいってしまう  室生寺のユニークな仏さま どこかでみかけそうな顔ですね
                室生寺のユニークな仏さま どこかでみかけそうな顔ですね



このライティングの妙、大胆な構図・・・
その強烈なメッセージは、 いったい何が見えてこの写真を撮れているのだろう?と
疑問をかきたずにおきません。

これほど美しくお寺の四季や仏像を撮れる人は 今だっていないと思います。
ただシャッターチャンスを狙うだけでなく、 何年も通い続けていないと決して出会えない 風景を撮った土門さんって一体!?
土門さんのライフワークであった『古寺巡礼』は、言葉では表せない、まさに写真の持てる能力を存分に発揮した作品でした。「目に見える物は必ず写真に撮れる」彼の言葉が思い出されます。

なかでも、JR東海の奈良の2008年冬のCMに土門さんの「室生寺」が登場したときは 旅の記憶と土門さんの写真がないまぜになって、胸がゆさぶられるほどに感動したのを覚えています。
十二神将が光りながら一躯ずつ現れる様には、興奮を覚えます。 (よく見ると奈良国立博物館に寄託している辰神・未神は出ていないので十躯ですね。笑)


こちらです
http://www.youtube.com/watch?v=ZVgdfITtsLw



CM恒例の曲、ボロディンの「ダッタン人の踊り」も効果的に、 厳かで静謐な室生寺の冬を演出していると思います。

室生寺 ―― 私が訪れたのは随分前ですが、懐の深さ、やさしさ、強さをもった静かなお寺でした。土門さんも撮ったあの門を入ってからお寺までの階段を上っていく間、誰ともすれ違わなかったのが、何だか別世界に入っていくような錯覚。
たぶん今も同じたたずまいでしょう。

いえ、そうあってほしい・・・・


女人高野 室生寺
室生寺2




筑紫のこどもたち


さて、土門さんのもうひとつの側面であり、ライフワークでもある
ドキュメントフォトの凄さ、メッセージの強さに改めて圧倒され続けています。

中でも目を引いたのは、昭和34~35年、国のエネルギー政策変更による炭鉱閉山で赤貧、どん底状態の炭鉱町の小学校での昼食風景です。

20人位の子供が写っていますが、お弁当のない子どもが数人います。
彼らは学級文庫の漫画雑誌を読むふりをして、楽しい筈の昼時をやるせなく過ごしているようです。お弁当を食べている友だちを見たくないのでしょう、雑誌を立てて顔を埋め回りを見ないようにしている女の子もいます。

初めて見た時、後の世代で飽食時代を過ごした私には衝撃でした。古い写真とはいえ東京オリンピックよりほんの数年前の日本での現実です。久しぶりに見てまた感動を新たにしました。若い世代にも是非見ていただきたい写真。

貧しくても、たくましく育つ子供たちの笑顔に、こころ打たれる作品です。


土門さん1




交通の便が悪く、次の予定地へのバス・電車の乗り継ぎ時間を気にしつつ、2時間ほど滞在しましたが、ちょうど高揚した気分のときに時間切れ・・・
タクシーの運転手さんが呼びに来て、後ろ髪ひかれる思いで酒田を後にしました。
私の触れた酒田の人たちも本当に温かい方たちでした 。


むすびに、土門拳の遺した言葉です。

「写真は肉眼を超える」「自分がついにゼロになった時、素晴らしい写真が撮れる」

限られた人生の中、自分の追求すべき姿、目標の本質が全てこれらの言葉に凝縮されていると思います。

昭和の大切なものを残してくれた土門拳。
「土門拳の昭和」というより、土門拳が昭和そのものだったんだと感じた、ひとときでした。



美雨



最後まで読んでくれてありがとう
土門さん
パチリ


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Author:MIUMIU 美雨
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更新はマイペースで続けていきますのでどうぞよろしくお願い致します。

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